A02-7:プロトン・ミューオンで探る新物性と量子ダイナミクス
研究組織
研究代表者 |
中西 寛 | 大阪大学大学院工学研究科・助教 |
物性理論・研究統括、第一原理量子ダイナミクス計算法 |
研究分担者 |
下司 雅章 | 大阪大学ナノサイエンスデザイン教育研究センター・特任講師 |
第一原理物質設計、高圧物理・量子ダイナミクス探査物質系の状態計算 |
研究分担者 |
後藤 英和 | 大阪大学大学院工学研究科・准教授 |
計算物理学・インパルス法による量子状態計算法 |
研究分担者 |
Markus Wilde | 東京大学生産技術研究所・准教授 |
表面ナノ分子物性・量子反応ダイナミクスの観測実験 |
研究分担者 |
Dino Wilson | 大阪大学大学院理学研究科・講師 |
物性理論、カップルドチャンネル法による量子ダイナミクス計算法 |
連携研究者 |
福谷 克之 | 東京大学生産技術研究所・教授 |
表面・界面物性・表面・界面での量子状態観測実験 |
連携研究者 |
笠井 秀明 | 大阪大学大学院工学研究科・教授 |
物性理論・量子ダイナミクスの理論と応用 |
研究概要
密度汎関数理論に基づく電子状態計算法は一定の成功を収め、さらに原子間の相互作用にこの手法を援用した第一原理分子動力学法は、様々な物質の動的過程(化学反応を含む)に適用され成功を収めつつある。
しかしながら軽い原子の振る舞いにはトンネル効果、干渉効果等の量子力学的効果が顕著になり、分子動力学法の適応範囲外にある。これらは緊急の社会的要請であるエネルギー・環境問題に関連する元素である水素、リチウム等で特に重要となる。たとえば、燃料電池の運転温度においても水素原子核の振る舞いに、またリチウムイオン2次電池内の電極グラフェン上でのLiイオンの振る舞いにおいて、量子力学的効果が顕在化することが見出されており、原子の量子ダイナミクスの解明は学問的に興味深いだけでなく、社会・産業上の実問題の解決においても重要であることを示唆している。
さらに、J-PARCにおいて超低速ミューオンビームが物性研究用に提供され始めた。正ミューオン(μ+)は質量が陽子の1/9の荷電粒子で、物質中および表面において、水素よりさらに質量の小さな原子核として振る舞い、物性解析のためにも量子ダイナミクスが重要となっている。たとえば、バルクの格子間μ+は、近接する原子の電子状態に関する情報を与えてくれるが、すでに古典的なモデルでは、現象を説明できないことが分かっており、このことからも重要性がわかる。
本課題では、様々な物質環境下における陽子・ミューオンの量子ダイナミクス計算手法を、A02他班による電子状態計算手法とリンクさせつつA01班による計算コードへの実装技術を活用して開発し、本シミュレーションとμSR(ミューオンスピン共鳴法)・NRA(共鳴核反応法)実験双方にて現実物質の環境下での上記粒子の量子ダイナミクスを解析し、それら粒子の与える新規物性を探査する。