コンピューティクスによる物質デザイン:複合相関と非平衡ダイナミクス - 文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究 平成22年度~26年度

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A03-9:第一原理有効模型と相関科学のフロンティア

研究組織

研究代表者
今田 正俊 東京大学大学院工学系研究科・教授
物性理論、研究の統括および推進
研究分担者
三宅 隆 産業技術総合研究所ナノシステム研究部門・主任研究員
物性理論、第一原理計算と有効模型導出
研究分担者
中村 和磨 東京大学大学院工学系研究科・助教
物性理論、第一原理計算および方法論開発と応用
研究分担者
佐久間 怜 千葉大学大学院融合科学研究科・助教
物性理論、第一原理電子構造計算
連携研究者
小口 多美夫 大阪大学産業科学研究所・教授
物性理論、スピン軌道相互作用と電子状態計算
連携研究者
石橋 章司 産業技術総合研究所ナノシステム研究部門・グループ長
計算物質科学、第一原理計算
連携研究者
有田 亮太郎 東京大学大学院工学系研究科・准教授
物性理論、スピン軌道相互作用
連携研究者
藤森 淳 東京大学大学院理学系研究科・教授
固体物理、光電子分光実験との比較・検討
連携研究者
辛 埴 東京大学物性研究所・教授
軟X線光物性、超高分解能光電子分光、時間分解光電子分光

研究概要

我々の日常目にする物質の物性の多くが多数の電子の挙動によって決まる。この多電子の中には、原子核付近のコア電子から、フェルミエネルギー付近の電子に至るまで、数十から百eVにおよぶエネルギー差があり、これをまたぐマルチスケールの相互作用が多電子の階層構造を形成する。この階層構造の果てに3桁以上小さな常温以下のエネルギースケールの物性が決まる。階層性を利用して自由度を縮減するダウンフォールディング法により、着目するエネルギースケールのための少数自由度のみの有効模型が非経験的に導出され、有効模型を精緻な低エネルギーソルバーで解くことにより、従来までの密度汎関数法では困難な強相関電子系を高精度、低負荷で取り扱える新手法を確立した。

我々はこの密度汎関数法と強相関模型解法を融合した手法のさらなる展開を図り、現実の物質群への広範な実証研究を展開する。強相関物質の金属絶縁体転移や競合する秩序とゆらぎを第一原理的な手法で経験的仮定なしに理解した上で、光電子分光、電気伝導とスピン伝導を含む輸送現象、光学スペクトル、スピンダイナミクスなどの動的性質、励起構造に現れる特異な強相関効果を解明し、実験結果との比較検証を進める。とりわけ誘電応答、スピン伝導、交差相関に関する第一原理からの知見を得て、スピン軌道相互作用と強い電子相関効果の競合と絡み合いが生み出す物理を解明する。さらに未踏の強相関非平衡現象の解明に挑戦し、電子の相転移が生み出す超高速現象、なかでも光誘起金属絶縁体転移や一次転移の過渡現象、巨大応答のダイナミックスの解明を進めるとともに、進展の著しいフェムト秒時間分解光電子分光など非平衡実験手法の結果を理解する理論構築をめざす。


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