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- [A02] 矢花 一浩(研究代表者)
A02:光と電子のダイナミクスを記述する第一原理マルチスケールシミュレーション法の開発
研究組織
研究代表者 |
矢花 一浩 | 筑波大学計算科学研究センター・教授 |
研究概要
今日の先端の光科学では、レーザー技術の発達により光パルスの強度と長さを自在に変化させることが可能になっている。
パルス長はアト秒の時間スケールに迫り、固体中の電子ダイナミクスを実時間で計測し制御することが可能となりつつある。
また、光電場強度が1原子単位に近づくと、電子応答の著しい非線形性のため、物質中に生じる分極と印加した電場の簡単な関係―電磁気学の構成方程式―が存在しなくなり、量子力学の時間依存シュレディンガー方程式を解くところまで立ち戻らなければならなくなる。
すなわち、極限的な強電磁場と物質の相互作用では、量子力学と電磁気学を結合したアプローチが必要とされるのである。
我々は最近、このような問題に対して、光により生じる電子ダイナミクスを時間依存密度汎関数理論に基づき第一原理から記述し、巨視的電磁場のダイナミクスと微視的な電子ダイナミクスをマルチスケール手法を用いて結びつける新しい理論と計算法を開発した。
本研究は、この新しいマルチスケールシミュレーション法を発展させ、アト秒科学を中心とする先端の光科学研究を、第一原理計算の手法を用いて推進することを目的としている。
具体的な研究課題として、次のものが挙げられる。現時点で可能なシミュレーションは1次元的な光伝播に限られているが、これを縦電場が存在する場合や2次元的な光伝播に拡張する。
また、実験との定量的な比較のために、バンドギャップを正しく再現する汎関数を用いることが非常に重要である。シザーズ法、メタ汎関数、ハイブリッド汎関数など、バンドギャップの改良に成功している方法を電子ダイナミクス計算に実装する。
そして開発したシミュレーション法の有効性を確立し、先端の光科学を推進するため、高強度パルス光と結晶との相互作用の解明を目指してフェムト秒・アト秒実験を行う国内外の研究グループとの共同研究を推進する。
連携研究者
- 乙部 智仁
日本原子力研究開発機構関西光科学研究所・研究員