コンピューティクスによる物質デザイン:複合相関と非平衡ダイナミクス - 文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究 平成22年度~26年度

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A02:拡張アンサンブル密度汎関数分子動力学法によるATP加水分解の研究

研究組織

研究代表者
岡本 祐幸 名古屋大学大学院理学研究科・教授

研究概要

アデノシン三リン酸(ATP)は生体内でアデノシン二リン酸(ADP)とリン酸に加水分解されることによって、生体内のエネルギー供給源となっており、様々な生命現象で利用されています。しかし、その化学エネルギーの発生機構は未だ完全な理解が得られていません。

本研究課題では、この生命現象に必須の化学反応を、独自に開発する拡張アンサンブル密度汎関数分子動力学法を適用することによって、自由エネルギー計算を行い、定量的な解釈を得ることを目的とします。
申請者はこれまで主に生体系の古典力学に基づく分子シミュレーションの分野において、多くの拡張アンサンブル法を開発してきましたが、本課題は、化学結合の開裂が必要であり、古典力学では表せません。
よって、密度汎関数分子動力学法によって、量子効果を取り入れることにします。申請者のこれまでの拡張アンサンブル法の経験を密度汎関数法の分野に適用するものです。
ちょうど、昨年度焼き戻し傘サンプル法(Simulated Tempering Umbrella Sampling: STUS)という新しい拡張アンサンブル法を開発して、それを密度汎関数分子動力学法と組み合わせて、マロンアルデヒドのプロトン移動の自由エネルギー計算への適用に成功したところであり、十分な準備ができていると言えます。

本研究課題では、既存の拡張アンサンブル法に加えて、更に新しい拡張アンサンブル法の開発もしながら、ATP加水分解による化学エネルギーの発生機構の解明を目指します。


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